木曜の21時、部下に頼むつもりだった来週の定例資料を、結局AIに下書きさせて自分で直している。部下に背景を説明し、上がってきた初版を直して、もう一度返す。その往復を思うと、AIに投げて自分で整えるほうが今夜は確実に早い。
ただ、先月も同じ夜があった。来月もたぶんある。
flowchart TD
A[今夜の締切] --> B[AIに回す]
B --> C[部下に渡る仕事ゼロ]
C --> D[育つ機会が消える]
D --> E[来月も自分が抱える]
E --> A
部下より自分でAIに投げたほうが早い、は今夜に限れば正しい#
その判断は間違っていない。率直に言うと、私も同じ計算をしたことがある。
部下に客先向けの資料を「AIを使っていいから作ってみて」と頼んだ。翌日に出てきた初版は、的外れな記述だらけだった。スライドごとに、そこで言うべきこと、具体的な中身、ロジックの流れを書いて戻した。
それを元に部下がAIと壁打ちした版は、少し直せば普段の打ち合わせに出せる程度になった。そのとき湧いたのは「そこまで書くなら、最初から自分でAIに書かせればよかった」という気持ちだった。今夜の1件だけを比べれば、その気持ちは正しい。
AIに回すたびに、部下に渡る仕事が1件ずつ消えていく#
任せられないのは、あなたの度量の問題でも部下の能力の問題でもない。比べている単位が「今夜の1件」になっていることが原因だ。
今夜の1件で比べれば、AIはいつも部下に勝つ。説明は要らないし、初版を何度戻しても機嫌を損ねない。だから比べるたびにAIに回り、部下に渡るはずだった仕事が1件ずつ消える。
渡されなかった部下は、その仕事を一度も経験しないまま来月を迎える。来月の同じ仕事は、また「今夜の1件」として比べられ、またAIに回る。私はこれを、AI経由の自己複製と呼んでいる。
部下の見積もりに夜ごと自分で赤を入れる形でも、同じ複製は起きる。ただAIが間に入ると、自分で手を動かした実感が薄いぶん、複製に気づきにくい。
部下が育つかどうかは、AIに渡しても減らない側の仕事に入る。AIに渡せる仕事と渡せない仕事を分けないまま、すべてを今夜の速さで比べると、浮いたはずの燃料が来月の自分の作業として戻ってくる。
AIに回すのは、自分が書くはずだった下書きまでにする#
線は1本でいい。AIに回してよいのは、もともと部下に渡す予定のなかった、あなた自身の下書き作業だけだ。部下に渡せたはずの仕事は、AIに回す候補から一度外す。
迷ったら、次の2問で仕分ける。
Q1. この仕事は、AIがなかったら誰がやっていたか
→ 自分 … AIに回してよい
→ 部下 … Q2へ
Q2. 部下がこれを一度やれば、来月の自分の作業が1件減るか
→ 減る … 部下に渡す候補
→ 減らない … AIに回してよい(単発の作業)上に出す前の論点整理、自分用の週次メモ、メールの下書きは、Q1で「自分」に落ちる。毎月来る集計や定例資料の作成は、Q2で「減る」に落ちやすい。
この2問は、判断の物差しを今夜の速さから来月の自分の作業量へ置き換えるためのものだ。AIをやめる話ではなく、AIに回す先を自分の手元に限る話である。
部下には育てたい1件だけを、成果物の形と確認日を決めて渡す#
Q2で残った候補を全部渡す必要はない。渡し続けるのは1件だけでいい。
選ぶ基準は、部下の伸びしろより「外に出たとき粗くても致命傷にならないか」だ。私が部下に任せてきたのも、規模が小さく、多少品質が荒れても客先との関係が壊れない提案だった。全体の方針から外れていないかだけを見て、細部には目をつぶった。逆に、外したら取り返せない仕事は、任せても最後に自分で巻き取ることがほとんどだった。
任せれば遅れる危険は出る。だから渡すときは、成果物の形と途中確認の日を先に置く。
【依頼】〇〇(成果物の名前)
・誰が見て、何が判断できれば完了か:〇〇
・形:A4 1枚/箇条書き5行 など
・途中確認:〇月〇日(〇)〇時。途中の状態のまま見せてほしい
・AIは使ってよい。どこをAIに任せたかだけ一言添えて途中確認の日を置くのは、初版が外れていても戻す回数を1回に収めるためだ。完了の行が抜けると、頼んだ資料が想定と違う形で上がってくる。上の1行目だけは省かない。
逃げの一手:1件も渡せない週は、来週の1件を名指しだけしておく#
炎上や納期の詰まりで、その1件すら渡せない週はある。その週は無理に渡さず、AIと自分で片づけてよい。
代わりに、来週渡す1件を今週のうちに部下へ名指ししておく。「来週の定例資料はお願いしたい。途中確認は水曜」と一言送るだけで、渡す線は消えない。
渡すと決めた1件を自分で巻き取るのは、外に出したら取り返せないと分かったときだけにする。それ以外は、確認日に次の確認日を決めて返せば足りる。
まとめ:AIの速さで比べるのは、自分の下書きだけでいい#
今夜の1件で比べれば、AIはいつも部下より早い。だから部下に渡す1件だけは比べる対象から外し、確認日を決めて渡しておく。
本記事は AI が下書きし、管理人が監修しています。
査定に載らない組織仕事を振られたその日に、そのまま出せる定型文が3通ある。
→ 期待値コントロール定型文集(抜粋版)続きはタイムラインに置いていく。
