先月の会議で決まった見積りの前提を、来週の定例資料に引きたい。Copilotに案件名と「見積 前提」で聞くと、それらしいファイルが3つ返ってくる。開くと1つは旧版、1つは別案件の流用、残る1つは決定前の叩き台だった。
決まった中身は、たしかどこかのチャットに流れていたはずだ。そこへ辿り着く前に、次の会議の通知が鳴る。
flowchart TD
A[探す先が増える] --> B[検索の起点がない]
B --> C[探す時間を自腹]
C --> D[手元に索引1枚]
D --> E[探す先が1つ]
Copilotが入っても、探す先が1つ増えただけだった#
全社にAIが入ったとき、最初に試すのはたぶん検索だ。ファイル名を忘れていても、聞けば出てくると考える。ところが返ってくるのはAIが届く範囲の候補であって、あなたが欲しい1件ではない。
結局、メールの添付を遡り、チャットのスレッドを開き、共有フォルダを日付順に並べ替える。そこにAIの回答欄が1つ加わった。探す場所は減らずに、1つ増えた。
大企業のAI推進担当者でも、社内情報の分散を課題に挙げている。双日テックイノベーション公開の「Copilot・M365活用と社内情報活用に関する実態調査」の掲載ページの要約によれば、87.5%の担当者が分散を課題に挙げた。横断的なAI環境への期待を示す担当者は96.2%にのぼる。
出典: 約9割が「情報の分散」に課題を実感!双日テックイノベーション「Copilot・M365活用と社内情報活用に関する実態調査」 (2026年9月18日掲載) - ライブドアニュース
探し物のコストは、検索の起点を持たない本人が自腹で払っている#
96.2%は、横断的なAI環境への期待を答えた数字だ。私はこれを、今の環境では横断して探しにくいという実感の裏返しだと読んでいる(調査がそう結論しているわけではない)。横断検索の環境を整えるのは全社の仕組みを持つ部門の仕事で、課長の裁量では動かせない。
では、整うまでの探す時間は誰が払うのか。情報を置いた人でも、ツールを入れた人でもない。探す本人だ。私はこれを探し物の自腹と呼んでいる。
検索が当たらないのは、あなたの聞き方が下手だからではない。どこから探し始めるかという起点が、組織のどこにも用意されていないからだ。
私の仕事では、AIが役に立つかどうかは、そのAIが私の見られる情報にどこまで届くかでほぼ決まっている。だから案件の進捗や議論の中身、資料の更新版は、自分がアクセスできる場所に置いてもらうようにしている。AIが賢いから引けるのではない。置き場所を先に決めてあるから引ける。
チーム側で置き場所を揃える手もある。旧版が並ぶ共有フォルダを最新1つに絞る運用はよく効くが、チームの合意を取るのに燃料が要る。今週から1人で動かせるのは、自分の手元の起点のほうだ。
自腹を払っているかは、1つの問いで分かる。先週、同じ物を2回以上探したか。1件でも思い当たるなら、次の節の対象になる。
検索の起点は、よく探す物だけを載せた索引1枚に移す#
全社の索引を待たずに、自分専用の索引を1枚作る。載せる物を絞り、中身の要約はAIに書かせ、判断の根拠の1行だけ自分で書く。手順は3つで、最初の1枚は昼休みの残りで作れる量にとどめる。
載せるのは「先週2回探した物」だけでいい#
全部を載せると、索引そのものが新しい探す先になる。案件の経緯、判断の根拠、連絡先のうち、先週2回以上探した物だけを載せる。1画面に収まらなくなったら、載せすぎだ。
置き場所が自分で分からない行は、担当の部下に「この件の最新版のファイル名と置き場所を1行で返して」とだけ頼む。探し当てる作業そのものは、課長が抱える仕事ではない。
# 自分用索引(最終更新:10/6)
## 〔案件名〕
- 今の状態:〔1行〕
- 最後に決まったこと:〔日付〕〔中身〕
- なぜそう決めたか:〔1行・自分で書く〕
- 根拠の置き場所:〔ファイル名/スレッド名〕
- 聞く相手:〔名前〕中身はAIに書かせ、「なぜ」の1行だけ自分で書く#
中身の下書きは、会社が使ってよいと決めているAIに書かせる。その案件の資料やスレッドを指定して、次の依頼を貼る。
以下の資料から、〔案件名〕について次の項目を書いてください。
・今の状態(1行)
・最後に決まったこと(日付と中身)
・根拠が書かれているファイル名またはスレッド名
・この件で聞くべき相手
資料に書かれていないことは推測せず「不明」と書いてください。
同じ資料の版が複数ある場合は、日付が最も新しい版を使い、その版の名前を書いてください。「なぜそう決めたか」の行だけは、AIの下書きを自分の言葉で書き直す。私は会議のメモをAIの自動議事録に任せず、要点だけ自分の手で残している。AIの要約は丸められて、自分が大事だと判断した情報が抜けることがあるし、何より自分の頭に残らない。索引でも理由の1行が丸まると、2回目に引いたとき判断を再現できない。
索引の先頭には、自社の前提を3行置いておくといい。依頼のたびに前提を打ち直している夜も、その3行を貼るだけで短くなる。
更新は会議の直後に1行、4週間引かなかった行は消す#
会議が終わったら、次の会議に入る前に「最後に決まったこと」を1行だけ書き換える。まとめて週末に直そうとすると、その時点で索引は古くなる。
金曜の最後に1回だけ眺め、4週間引いていない行は消す。索引は育てるものではなく、絞るものだ。絞られた1枚は他人にも使える。部下から来る「あの件どうなった」には、該当の行を貼って返せばいい。同じ確認に何度も答えて削られる時間は、この1枚からも減らせる。
逃げの一手:索引を作る余力がない週は、見つけた場所を1行貼るだけでいい#
1枚を最初から作らなくていい。何かを探して見つけた瞬間に、そのファイル名と置き場所を1行だけ索引ファイルに貼る。要約もAIも使わない。2回目に同じ物を探すときは、検索窓より先にその1枚を開く。
それでも見つからない物は、5分探して出なければ探すのをやめ、知っていそうな人に聞く。起点が組織に無い以上、当面の起点は人になる。探し続けるほど、自腹の額が増えるだけだ。
まとめ:探す先を増やすより、探し始める場所を1つにする#
横断検索の環境が整うかどうかは、あなたの裁量の外にある。整うまでの探し物の自腹は、手元の索引1枚で小さくできる。
本記事は AI が下書きし、管理人が監修しています。
査定に載らない組織仕事を振られたその日に、そのまま出せる定型文が3通ある。
→ 期待値コントロール定型文集(抜粋版)続きはタイムラインに置いていく。
