人事から「AI活用を踏まえた育成計画は、全社の方針が固まってから」と連絡が来る。同じ週に、部下から「この報告書、AIで下書きしていいですか」と聞かれる。方針はまだ無いのに、その場で答えを出すのはあなただ。
flowchart TD
A[全社方針なし] --> B[人事の見直しが進まない]
B --> C[質問は課長へ]
C --> D[1人1業務で整理]
育成への影響は8割近くが見込み、動けているのは2割未満#
産業能率大学 総合研究所とHR総研が、人事担当者を対象に「生成AIと人材育成に関する人事実態調査」を行い、320社の回答を集計した。一次ソースは産業能率大学のプレスリリースで、ITmedia ビジネスオンラインがこの調査を記事にしている。
生成AIの普及が人材育成のあり方に「大きく影響すると考えている」は40.3%、「やや影響すると考えている」は38.8%。合わせて8割近くが影響を見込んでいる。
ところが、見直し・対応を行っているという回答は15.0〜19.4%で、どのテーマでも2割に届かない。テーマは能力・スキル、育成方針・体系、育成内容・方法、マネジメントのあり方、人材育成に関する制度・運用だ。
進みにくい理由の最多は「全社として生成AI活用の方向性が明確ではない」で48.3%。次が「生成AIの活用によって、仕事や役割がどのように変わるか整理できていない」の46.9%だった。時間や工数、予算の不足を挙げた回答は、この2つより少ない。
なお、答えているのは人事の担当者・責任者で、課長ではない。現場の管理職が同じ認識かどうかは、この調査からは分からない。
仕事の変わり方は、上からではなく1業務の単位でしか見えない#
方針が降りてこない間も、部下は今日の仕事でAIを使うかどうかを決めなければならない。その相談先は人事ではなく、直属の上司になる。全社の方針が定まらない間、育成の現場の判断だけがあなたに残る。名前を付けるなら「方針待ちの現場払い」だ。
ここで部下を育てられていないと感じても、それはあなたの指導力の問題ではない。人事の側でも、仕事や役割がどう変わるか整理できていないことを理由に挙げた回答が46.9%ある。誰も描いていない地図を、あなたが持っていないのは当然だ。
ただ、その整理は上からは進まない。仕事がAIでどう変わるかは、個別の業務を実際にAIに通してみないと見えないからだ。
私は以前、ある案件に入ったメンバー数人へ、AIの使い方を一括で展開したことがある。結果、成果物の質が揃わず、仕事が前に進まなくなった。ざっくりした質問をAIに投げ、それらしい回答が返ってきても、正しいかどうかを評価する軸を持てていなかった。使い方は配れても、判定の物差しは配れていなかった。
だから広げない。部下1人の、担当業務1つに絞る。業務を選ぶ基準は次の3つだ。
- 週に1回以上発生する 次の1on1までに、もう一度やらせて確かめられる
- 成果物が文書で残る 報告・議事録・手順書など、直した所が目に見える
- 外に出る前に止められる 社外や役員に直接届く物は外す
部下は、次の評価期に任せる範囲を広げたい1人を選ぶ。全員分の計画は、方針が降りてから作ればいい。
次の1on1の15分で、AIの下書きを部下に直させ、直した理由を聞く#
手順は3つで、1on1の枠の中で終わる。
- 1on1の前日までに、業務と材料を指定する 社内で使ってよいとされているAIに限る
- 1on1の最初の10分は、部下が下書きを直すのを横で見る 口は出さない
- 残りの5分で、直した所を下のメモに仕分ける 書くのは部下
部下がAIに貼る依頼文は、これで足りる。
次の材料から「〔業務名〕」の下書きを作ってください。
・読む人:〔誰が読み、何を決めるための文書か〕
・材料:〔先週の実データ。社名・個人名は伏せる〕
・形式:いつもの見出しだけ流用。分からない箇所は空欄のまま残す1on1の最後に埋める仕分けメモはこれだ。
業務名:
AIの下書きのまま通った所:
本人が直した所と、直した理由:
AIでは書けず、本人が足した所:育成の題材は3行目と4行目にある。直した理由を言葉にさせると、部下は自分の仕事のどこが判断だったかを自覚する。AIに答えさせる前に仮説を立てさせる手は、部下の判断経験が痩せていくのを入口で止める問いとして別に書いた。仕分けメモは、同じことを出口側で聞く。
15分を空ける余力が無い週が続くなら、準備をAIに肩代わりさせて1on1の枠を作る手順で先に時間を浮かせておく。
仕分けメモが3枚たまれば、方針が降りたときの答えになる#
仕分けメモは捨てずに、その部下の1on1記録に貼っておく。同じ業務で3回分たまると、どこがAIで変わり、どこが人の判断で残るかが、部下1人分の実物で見える。人事の回答で理由の2番目に挙がった、整理できていない「仕事や役割の変わり方」を、1業務の大きさで先に書いたものになる。
次の業務へ移る判定は単純だ。3行目と4行目が2回続けて空欄なら、その業務はAIの下書きで回る。そこで同じ部下の別の1業務に移る。
全社方針が出て「現場の業務はAIでどう変わるか」と聞かれたら、推測ではなくこの1枚を出せばいい。自分の仕事に同じ仕分けを一度かけておくと、AIに渡せる仕事と、調整や感情労働のように手元に残る仕事の線が、部下の1業務にもそのまま引けると分かる。
逃げの一手:1on1が取れない週は、色を付けて出してもらうだけでいい#
1on1の15分すら取れない週はある。その週は、AIの原文と直した後の文書を並べて出してもらい、「直した所に色を付けて」とだけ頼む。理由を聞くのは翌週でいい。
社内でAIの業務利用がまだ認められていないなら、AIは使わない。業務の手順を部下と5行に書き出し、「AIに任せられそうな行」に印を付けるだけで、仕分けの下準備になる。
全社方針が出て自分の進め方と食い違ったら、方針に合わせて捨てていい。1業務分しか作っていないから、捨てても失うものは小さい。
まとめ:方針が来るまでの育成は、1人の1業務で足りる#
全社の方針が定まらず進んでいないのは人事の見直しで、部下の「これAIでいいですか」は止まらない。答えるのが自分なら、1人の1業務を仕分けた1枚だけを手元に置いておく。
本記事は AI が下書きし、管理人が監修しています。
査定に載らない組織仕事を振られたその日に、そのまま出せる定型文が3通ある。
→ 期待値コントロール定型文集(抜粋版)続きはタイムラインに置いていく。
