昇進したくない。だが、昇進せずに今の年収を維持できるのかは誰も教えてくれない。
夢ではなく算数で答える。専門性で稼ぎ続ける「個人エキスパート」が、今のあなたの会社で本当に経済的に成立するのか。確認すべき数字は4つだけだ。
flowchart TD
A[昇進拒否] --> B[専門職コース]
B --> C{制度の有無}
C -->|あり| D[算数で検証]
C -->|なし| E[退路の準備]
「昇進しない」が経済的に成立する条件は3つしかない#
昇進を蹴り続けた時期、私も同じ問いを抱えていた。専門家として残ることが経済的に成立するのか、誰も算数で答えてくれなかった。
外から観察してきた限り、専門職として年収を維持できているケースには共通点がある。
1つ目は、会社に複線型のキャリア制度が実在すること。2つ目は、その制度のエキスパート等級が管理職等級と給与レンジが重なっていること。3つ目は、その等級に実際に到達している先人が組織内に複数人いること。
このうちどれか1つでも欠けると、「専門性で稼ぐ」は精神論になる。制度が紙の上だけ存在しても、実際に管理職以下の給与水準に張り付いているなら、その制度は「降格の婉曲表現」として機能している。あなたが調べるべきはこの3条件の充足度であり、夢ではない。
リクルートマネジメントソリューションズが2024年に公表した「昇進・昇格制度の現状」によれば、管理職コースと専門職コースを並立させた複線型制度を導入している企業は58.0%。2016年から2024年の8年で30%近く増えた。(出典: リクルートマネジメントソリューションズ「昇進・昇格制度の現状」)
数字だけ見れば過半数の企業に制度がある。ただし「制度がある」と「制度が機能している」の間には深い谷がある。あなたの会社がどちら側か、まずそこを確定させる。
役職手当の実数が、降りた瞬間に失う額を決める#
専門性で残るとは、つまり管理職手当を捨てるという選択だ。捨てる額を正確に知らないまま降りるのは、雇われの算数として最悪の判断になる。
JILPTが整理した令和4年賃金構造基本統計調査によれば、所定内給与の月額は部長級58.6万円、課長級48.7万円。非役職者を100とした指数では、課長級172.9、部長級208.2となる。役職階段の段差は、平均で見てもこの規模で開いている。(出典: JILPT「役職別の賃金」令和4年賃金構造基本統計調査)
年収に換算すれば、課長と非役職者の差は数百万円単位になる。賞与係数の差を加えれば、課長を降りるという判断は生涯年収レベルでも無視できない影響を持つ。
ただしこれは「平均値の話」であって、あなたの会社の数字ではない。話を聞いた課長たちは口を揃えて言う。「降りるかどうかを考える前に、自分の手取りベースで何がどう動くかを誰も計算してくれない」と。雇われの算数は、平均ではなく、自分の給与テーブルでやる以外にない。
確認すべき4つの数字#
専門性で生き残れるかを判定するために、見るべき数字は次の4つだ。
- エキスパート等級の上限月給と、同水準の管理職等級の上限月給の差額。これが「降りた瞬間の天井の差」。ゼロに近ければ制度が機能している。100万円単位で開いているなら、その制度は装飾だ
- 役職手当の月額。降りた瞬間に消える額をそのまま示す。給与明細の「役職手当」「管理職手当」の行を見るだけで分かる
- 賞与係数の差。等級別係数表があるなら、エキスパートと管理職で何ポイント違うかを見る。年間ベースでは月給差より影響が大きい
- 退職金テーブルの等級係数。最終等級が退職金に効く設計の会社では、生涯年収レベルで差が出る
この4つは、人事制度の社内資料か、給与規程に書いてある。「資料を見せてください」と言って渋られたら、それ自体が制度の弱さの証明だ。きちんとした複線型制度を持つ会社は、これを社員に開示している。
(この数字を集める調査作業自体が燃料を削る構造については課長が「燃え尽き予防」より先にやるべき燃料計の読み方で整理した)
制度はあるが運用がない、を見分ける#
紙の制度と運用の乖離は、3つの観点で見抜ける。
1つ目、エキスパート等級に現在いる人数。組織内に該当者が1人もいない、もしくは「定年延長の元部長」しかいないなら、その制度は専門職用ではなく救済措置だ。
2つ目、その人たちの年齢分布。50代後半に偏っているなら、若手・中堅が乗れる制度ではない。
3つ目、過去5年で管理職コースからエキスパートコースへ転換した人数。ゼロなら、転換ルートは制度上の飾りだ。
これを社内の人事に聞くのは、特別な行動ではない。「自分のキャリアを設計するために制度の実態を知りたい」という問い合わせは、人事の本来業務に含まれる。聞いて嫌な顔をされるなら、その時点で雇われの算数の答えはほぼ出ている。
(制度の説明を「知らされていない」ままキャリア判断を迫られる課長の構造は課長になっても誰も教えてくれなかった、組織の本当の仕組みに詳しい)
逃げの一手#
4つの数字を集めた結果、「専門性で残っても今の年収水準は維持できない」と判明する会社は実在する。むしろ、それが過半数かもしれない。
そのときの退路は2つある。
一つは、転職市場で同じ専門性の値札を確認すること。今の会社の専門職等級が低いのか、市場全体でその専門性が低く評価されているのかは、[自分の会社の中だけ見ていても分からない](/posts/teian-ai-sir-kacho-gijutsuryoku-hokai/)。転職サイトへの登録は意思決定ではなく、情報収集だ。値札を見た上で残るのと、見ずに残るのでは、心理的負荷も交渉力もまったく違う。
もう一つは、昇進を一度だけ受けて、給与レンジを引き上げてから専門職に転換する経路を検討すること。複線型制度が機能している会社の多くは、管理職等級到達者が専門職に降りるときに給与を据え置く規程を持っている。先に上げてから横にずれる、という算数が成立する場合がある。
どちらの退路も、燃料を増やす行為ではない。ただ、「降りたら年収が下がる」という漠然とした恐怖を、確定した数字に変える操作だ。恐怖が数字になれば、決断のエネルギーは少なくて済む。
(昇進意欲の伝え方そのものを期待値コントロールで再設計する手順は「昇進はいいです」を黙っている課長が、評価を一番損している理由に書いた)
(プレマネとして二重評価軸で消耗している構造そのものを降りる算数は二役こなして残業代ゼロ。プレマネ搾取の構造と、燃料を残したまま降りる一手が参考になる)
まとめ:夢ではなく数字で「個人エキスパート」を判定する#
「専門性で稼ぎ続ける」は、信じる対象ではない。あなたの会社の給与テーブルと制度実態に照らして、成立するかしないかが事実として決まる話だ。
複線型制度58.0%という数字は希望にも絶望にも使える。希望に変えるのは、4つの数字を自分で確認した人間だけだ。
本記事は AI が下書きし、管理人が監修しています。
