「人件費削減のために、A評価はあまり出さないように」。
こういう話がXで出るたびに、「うちの会社も」「ずっとそれです」という反応が数千件集まる。その投稿が実際に起きた話かどうかより、思い当たる人がこれだけいるという事実のほうが本質だ。
率直に言えば、私自身も同じ経験をしている。この手の指示が届いたとき、断るより従うほうが楽に見えた。だが従った瞬間に何が壊れるかは、そのときには計算できていなかった。
flowchart TD
A[A評価禁止の指示] --> B[一律B評価に従う]
B --> C[評価契約の破綻]
C --> D[報連相減少・離職]
D --> E[課長の燃料低下]
評価契約は、口に出されないまま結ばれている#
部下とあなたの間には、契約書のない契約がある。
「成果を出せば、それに見合う評価が返ってくる」。この暗黙の約束を、私は評価契約と呼んでいる。雇用契約には書かれていない。だが部下は、この前提で燃料を燃やしている。
A評価相当の働きをした部下を、原資の都合でB評価にする。これは、その契約を一方的に破る行為だ。
問題は、破った張本人が誰に見えるかにある。指示を出したのは部長や役員だ。だが評価面談で「今回はBです」と告げるのは、あなただ。部下から見れば、契約を破ったのは目の前のあなたになる。
上の判断が、課長の顔をして部下に届く。この構造が、すべての非対称の出発点だ。
従った課長が、最も大きな燃料コストを払う#
指示に従うのは、その場では一番静かな選択肢だ。だが請求書は後から来る。
経験してきた限り、壊れた評価契約は3つの形で課長に返ってくる。
報連相が減る 「正直に報告しても評価に反映されない」と部下が学習する。悪い情報ほど上がってこなくなる。火種が見えなくなる。
離職が始まる A評価相当の働きをする部下ほど、市場で評価される。一律Bは、その層に「ここにいる意味はない」と告げる通知になる(部下が「辞めます」と言い出す前夜の構造はこちらに書いた)。
残った課員の燃料が落ちる 抜けた一人分の仕事は、残った課員に乗る。評価は据え置きのまま負荷だけ増える。次に折れるのは誰か、計算するまでもない。
ここに非対称がある。指示を出した部長は、面談に同席しない。離職した部下の穴埋めもしない。燃料コストを払うのは、従順に従った課長一人だ。
雇われの算数で見れば、これは割に合わない。指示への従順は無料に見えて、請求書は全額あなた宛に届く([残業代も査定も削られる構造の全体像はこちら](/posts/zangyodai-nashi-satei/))。
指示には従う。期待値は別ルートで設計する#
ここで「指示を撥ね返せ」とは言わない。原資の決定権はあなたにない。撥ね返す燃料のほうが先に尽きる。
やるのは、評価という1本のルートに集中している期待値を、複数のルートに分散させることだ。評価点は上が握っている。だが評価以外の報酬は、課長の裁量に残っている。
評価点と評価言語を切り離す 点数はBでも、面談で渡す言葉まで一律にする必要はない。「原資の都合で点数はBだが、私はあなたの今期の仕事をA相当と見ている」。この一文を、評価コメントに残す。点数の制約と、あなたの認識は、別の情報として届けられる(AIで書いた評価コメントが軽くなる構造は別記事に書いた)。
点数以外の報酬を裁量で配る 次の重要案件のアサイン、社内での発言機会、上への名指しの推薦。これらは原資と無関係に動かせる。点数で返せなかった分を、別の通貨で返す。
制約の出どころを正確に伝える 「私の評価ではない」と逃げるのは信用を失う。だが「今期は全体方針として点数の上限がかかった」と事実を共有するのは、嘘ではない。部下が怒る相手を、あなたから構造へずらす。
この3つは、原資ゼロでも実行できる。失った契約を、別の通貨で部分的に建て直す作業だ(査定で期待以下と告げる前の準備はこちらにまとめた)。
逃げの一手:自分の評価契約も同じ手で破られている前提で動く#
ここまで部下の話をしてきた。だが忘れてはいけない。
あなた自身も、上から同じ手で評価契約を破られている当事者だ。原資の都合で点数を抑えられているのは、部下だけではない。
だから逃げの一手は、自分の評価ルートも分散させておくことだ。会社の評価点が一律で抑えられる環境なら、その点数に自分の燃料残量を連動させない。社外で通用するスキルの記録、実績の言語化、転職市場での現在地。これを年に一度は棚卸ししておく(転職サイトに登録したまま動かない課長の話はこちら)。
逃げ道がある状態で従うのと、ない状態で従うのは、同じ「従う」でも燃料の減り方が違う。退路を持つ者だけが、面談で落ち着いた顔をしていられる。
まとめ:従順の請求書は、全額あなた宛に届く#
「A評価を出すな」に従うのは、その場では最も静かな一手だ。だが評価契約を破った顔は、上ではなくあなたになる。
点数は渡せなくても、言葉と別ルートの報酬は渡せる。そこまで設計して、初めて従順は割に合う。
本記事は AI が下書きし、管理人が監修しています。
