金曜の夕方、部下に頼んでおいた見積り資料が上がってきた。開くと、先方が気にしていた金額の根拠がどこにも書かれていない。結局その夜、自分の手で作り直す羽目になった。
flowchart TD
A[曖昧な指示] --> B[部下が推測]
B --> C[想定と別物]
C --> D[自分で作り直す]
同じ言い直しを繰り返しても、手戻りは減らない#
最初は言葉が足りなかったのだと思った。次の依頼では、背景も目的も、いつもより丁寧に書いた。それでも上がってきたものは、また違う方向を向いていた。
私自身も似たことをやったことがある。部下に「AIを使っていいから、客先向けの資料を作ってみて」とだけ頼んだ。翌日出てきた初版は、的外れな内容が並ぶだけの代物だった。結局スライドごとに、そこで言うべきことと展開をこちらが書いて渡し直し、AIとの壁打ちを重ねてようやくそこそこの精度に仕上がった。そこまで書くなら、最初から自分で作ったほうが早かった、という気持ちだけが最後に残った。
言葉を尽くすほど、指示は長くなる。だが長さと伝わりやすさは比例しない。同じことが次の依頼でも起きるなら、直すべきは言い方ではない。
伝わらないのは語彙ではなく、完了条件が誰にも書かれていないからだ#
曖昧な指示を論点に分解する力そのものは、上流の仕事として別記事(曖昧な指示は上流の仕事)に書いた。今回扱うのはその手前、指示を出す側の落ち度だ。
指示の中身がどれだけ詳細でも、「これで終わり」と判定できる条件が一度も書かれていなければ、部下は自分なりの終わりを想像して手を動かすしかない。あなたは自分の中にある終わりの像と照合し、違うと感じたら差し戻す。二つの終わりは、最初からすれ違ったまま走り出している。
見る人が誰かも同じくらい重要だ。判定者が明示されていないと、部下は「良さそうに見えるか」という自分の感覚を基準にする。あなたが見る基準と部下が想像する基準は、扱ってきた案件も立場も違うので、一致しない方がむしろ自然だ。
言い方や語彙を変えても直らないのは当然で、直すべき場所がそもそも違う。完了条件は指示の巧拙ではなく、指示の設計に属する部品だ。
指示の最後に、完了条件を1行足す#
直す場所は指示の末尾だ。何を頼むかを書いたあとに、次の1行を必ず加える。
【完了条件】
これは(判断する人)が見て、
・(必須要素1)
・(必須要素2)
が揃っていれば完了。それ以外は差し戻す。先の見積り資料なら、こう埋める。
【完了条件】
これは私が見て、
・先方が出した懸念点に1つずつ回答している
・金額の根拠に出典(見積書・実績単価表)が書いてある
が揃っていれば完了。この1行を最初に渡していれば、金額の根拠が抜けたまま出てくることはなかった。判断する人を名指しし、揃うべき要素を名詞で並べるだけでいい。文章の巧さは要らない。
資料の中身を何にするかという「決定文」を先に書く発想は別に書いた(役員説明で差し戻される前に、パワーポイントは決定文から作る)。決定文が資料の内側を決めるのに対し、完了条件は資料の外側、判定基準を決める。両方揃って初めて、指示は一往復で終わる。
出力の形式を先に固定するという発想そのものは、議事録の依頼でも同じだと書いた(会議後にAIへ「要約して」と頼むほど、誰も読まない議事録が増える)。相手が人間かAIかは関係ない。何を渡せば終わりになるかを、判定の言葉として渡していないのが問題の全部だ。
それでも条件通りに来ないときの逃げの一手#
完了条件を書いても、初回からきれいに揃うとは限らない。そのときは、条件のどの項目が抜けているかだけを指摘して突き返す。3項目のうち2項目が満たされているなら、残りの1項目だけを名指しして差し戻す。作り直しではなく、埋め直しにする。
同じ項目が何度も抜けるなら、あなたの条件そのものが、本人の持っている情報だけでは埋まらない設計になっている疑いがある。そのときは条件を削るか、判断に必要な材料をこちらが先に渡すかのどちらかで、自分の設計を見直す。
月をまたいで同じ手戻りが積み上がっているなら、記録で語ったほうが話が早い。案件・時間・原因を残す運用は別記事(毎月末、部下の尻拭いばかりが続くなら、3列で記録してから動く)に書いた。
まとめ:完了条件は言い方ではなく設計の問題だ#
指示が伝わらないのは、語彙が足りないからでも熱意が足りないからでもない。誰が見て何が揃えば終わりかという1行が、指示の中に一度も書かれていなかっただけだ。
本記事は AI が下書きし、管理人が監修しています。
査定に載らない組織仕事を振られたその日に、そのまま出せる定型文が3通ある。
→ 期待値コントロール定型文集(抜粋版)続きはタイムラインに置いていく。
