新卒の初任給が上がった春、1on1の冒頭で部下が切り出す。「今年の新人、私より基本給が高いって本当ですか」。あなたはその金額を決めた会議にいなかったし、変える権限もない。それでも、答える席に座っているのはあなただけだ。
flowchart TD
A[逆転への不満] --> B[初任給の水準]
A --> C[評価の根拠]
A --> D[仕事の割り振り]
B --> E[決めた側へ返す]
初任給の逆転への不満は「経験年数」の言葉で持ち込まれる#
給与逆転に引っかかるのは、一部の不満の多い社員ではない。Job総研(パーソルキャリア運営)が「2026年 新卒の給与に関する意識調査」で社会人302人に聞いた。新卒の方が自分より高給の場合、87.5%が「不公平を感じる派」、72.2%が転職を「検討する派」だった。
どちらも「どちらかといえば」を含めた合算で、実際に逆転された人ではなく、そうなった場合を想定した回答だ。回答者はキャリアや転職の相談サービス「JobQ Town」の登録者である点も割り引いて読む。
不公平を感じる理由で最も多かったのは「経験年数が違う」だった。自由記述には「既存社員の方が業務的な負担も重いし、新卒に仕事を教える分の負担も増えるので納得できない」という声も載っている。Job総研自身もまとめで、「きちんと評価されているかどうか」という納得感との関係を挙げている。部下が口にする「逆転」は、金額の形をとった、経験と負担が見られているかの話でもある。
原資を決めた人は1on1に来ず、説明役だけが下りてくる#
不満をぶつけられたとき、あなたが最初に試すのはたぶん会社の事情の説明だ。採用の競争が厳しい、新卒の水準を上げないと人が来ない。だが説明しても、部下の給与明細は1円も変わらない。話せば話すほど、あなたは決めてもいない判断の弁護人になり、不満の宛先があなた自身にすり替わっていく。
手詰まるのは、あなたの説明が下手だからではない。初任給の水準は、新卒採用の競争を背景に経営と人事が決めた原資の配分で、あなたの裁量の外にある。決定には加わっていないのに、部下が日常的に会う会社の顔はあなたしかいない。だから説明の役だけが下りてくる。
これを説明の肩代わりと呼んでおく。人事異動の理由を本人に伝えさせられる場面も同じ形をしていて、根拠を渡されないまま説明だけを任される側は、答える範囲を先に決めておくほど燃料を失わずに済む。
肩代わりから降りるには、不満を「誰が決めるか」で3つに割る。
| 不満の中身 | 決める人 | 1on1での扱い |
|---|---|---|
| 初任給の水準 | 経営・人事 | 扱わない。決めた側へ返す |
| あなたが書く一次評価と、その根拠 | あなた | 扱う |
| 新卒に教える負担の割り振り | あなた | 扱う |
最終の評価結果は上で決まるが、何を根拠にどう書いたかはあなたが持っている。3つのうち2つは、最初からあなたの手の中にある。
最初の30秒で、動かせる2つを先に口にする#
1on1では、不満をひと通り聞いたら、金額の是非に入る前に次の一言を置く。
初任給の水準は、私が決めた話ではないし、私には変えられない。
決めた理由を、私が会社の代わりに説明することもしない。
私が動かせるのは2つ。あなたの評価をどう書くかと、仕事の割り振りだ。
今日はその2つの話をさせてほしい。効くのは2文目だ。会社の事情を代弁しないと先に言うと、部下は議論の相手を探すのをやめ、残りの時間を2つの話に回せる。不公平だと感じること自体は否定しない。調査を見るかぎり、多数派の感覚だからだ。
水準の話がもう一周戻ってきても、反論はしない。3文目をもう一度言って、2つの話に戻す。判定基準は単純で、あなたが答えを持っていない話を2回聞いたら、そこで切り上げてよい。
評価の根拠と教える負担は、その場で次の一歩まで決める#
2つの話は、どちらも次にやることを1つ決めてから閉じる。水準の話で面談を終えると、部下には不満だけが残り、あなたには来週も同じ1on1が残る。
評価は、結果を約束せず根拠を見せる#
評価の相談を受けたとき、私は自分がどう判断して上へ上げたかを根拠ごと話す。上でどう決まるかは私にも分からないので、そこは分からないとだけ言う。結果は約束できないが、判断の中身は隠す理由がないからだ。
給与逆転の1on1でも同じことをする。前期にあなたが書いた評価の根拠を見せ、今期の評価に何を書くつもりかを1行で伝える。昇給額は約束しない。約束してよいのは、根拠をどう書くかまでだ。
新卒に教える負担は、数えて割り振りを変える#
自由記述にあった「教える分の負担」は、あなたが今日から動かせる。新人の指導が1人に寄っているなら、誰が何時間使っているかを本人に1週間だけ記録してもらい、次の1on1で割り振りを見直す。寄せたままにするなら、その時間を今期の目標に書き込み、評価の対象にする。
どちらにするかを決めるのはあなたで、記録を付けるのは部下だ。査定の紙に項目がない仕事を評価軸へ戻す考え方は、部下が抱える指導の時間にもそのまま当てはまる。
席を立つ前に、次回までに自分がやることを1つ言う。次の1on1はその結果から入ればよく、約束を3行のメモに残してAIに準備を組ませるやり方を使えば、準備に燃料を割かずに済む。
逃げの一手:「転職を考えている」と言われても、引き止めの約束はしない#
不満が「転職を考えている」に変わることもある。72.2%は仮定の質問への回答だが、本人の口から出たら軽くは流せない。それでも、昇給や是正を匂わせて引き止めない。守れない約束は、次の1on1であなた自身への不満に変わるだけだ。
代わりに、原資を決めた側へ1通だけ返す。
メンバーから、新卒との給与逆転について不満が出ています。
水準は私の裁量外のため、本人には「変えられない」とだけ伝えました。
既存社員への説明の場を設けるかどうか、ご判断をお願いします。送ったら、水準の件はあなたの議題から外してよい。説明の場を作るかどうかは、決めた側が判断することだ。同じ話が毎週続くなら、あなたの説得で止まる段階は過ぎている。そこから先は、その部下が抜けた場合の業務の引き継ぎ先を、先に決めておく方が割に合う。
まとめ:決めていない数字を、弁護しなくていい#
初任給の水準は1on1の議題ではなく、あなたが持てる議題は評価の根拠と仕事の割り振りの2つだけだ。決めていない数字の説明は、決めた側へ返していい。
本記事は AI が下書きし、管理人が監修しています。
査定に載らない組織仕事を振られたその日に、そのまま出せる定型文が3通ある。
→ 期待値コントロール定型文集(抜粋版)続きはタイムラインに置いていく。
