部下が要件定義のたたき台をAIに2時間で書かせ、それなりの精度で出してきた。あなたが3年かけて身につけたはずの「設計の勘所」が、画面の中で再現されている。
レビューしながら、あなたは内心で計算を始める。この技術知識、あと何年もつのか、と。
外から観察してきた限り、いま詰みかけている課長ほど「自分の専門性」を年収の根拠だと信じている。だが、その根拠が今期に音を立てて値崩れし始めた。
flowchart TD
A[一般技術知識] --> B[AIが補完可能]
B --> C[翻訳の希少性低下]
C --> D[単価が値崩れ]
D --> E[ポジション転換]
賞味期限が縮んだのは知識ではなく「翻訳」の値段#
縮んだのは技術そのものではない。縮んだのは「一般的な技術知識を顧客に翻訳して渡す」という仕事の値段だ。
クラウドの基礎、要件定義の進め方、システム設計の定石。これらはどれも、 AIに問えば数分で構造化された答えが返る領域になった。野村総研は2024年に、生成AIが日本の知識労働の広い範囲に影響を及ぼすと推計している。SIer課長の中核業務である「翻訳」は、その射程の真ん中にある。
私が話を聞いてきた課長たちは口を揃えて言う。「客が打ち合わせ前にAIで予習してくる」と。
御用聞き+翻訳者というポジションが、なぜ構造的に落ちるのか。その解剖は客先がAIで予習してくる時代のSIer課長の存在地に書いた。本稿はその先、「ではあなたの残り時間をどう算数にするか」を扱う。
資格による差別化は、もう数字の上で機能していない#
「資格を取って差別化する」という今期の打ち手は、燃料の使い方として最悪に近い。
応用情報技術者試験の合格者は年間約1.7万人規模で生まれ続けており、資格保有はすでに「希少」ではなく「前提」になった。
差別化のための資格は、定義上、保有者が増えれば差別化として死ぬ。あなたが今期に学習時間という燃料を300時間投じても、単価は1ミリも上がらない。同じ資格を持つ人間が年間1万人単位で増え続ける市場では、差別化という概念自体が成立しない。
ここで雇われの算数を一行で書く。
年収=「その会社で替えのきかない度合い」の市場価格であって、稼働時間でも資格枚数でもない。
一般技術知識はAIが補完できる。資格は前提化した。だとすると、替えのきかなさの源泉を「知識の量」に置いている課長から順に、単価が静かに下がっていく。これは精神論ではなく構造だ。
「替えのきかなさ」をどこに置けば年収の根拠になるか、雇われたまま専門性の市場価格を設計する考え方は個人の専門性を年収に変換する雇われの算数に詳しく書いた。
燃料を使う順序で、今期の打ち手を並べる#
打ち手はある。ただし燃料効率(H = Result / Energy)の高い順に並べないと、疲弊だけが残る。
整理すると、こうなる。順番を守ることに意味がある。
- 客の意思決定の文脈を握る AIが出せないのは「この組織がなぜこの判断をしたか」の記憶だ。議事録ではなく、決裁の裏側の力学を握る。燃料消費はほぼゼロで、希少性が一番高い。
- AIを使う前提で要件定義を再設計する たたき台はAIに書かせ、あなたは矛盾の発見と優先順位づけに回る。詳しい手順は提案資料をAIに任せたSIer課長の技術力崩壊に書いた。
- 横の翻訳を一本足す 技術と事業、技術と法務。片側の言語しか話せない人間が多い領域に、もう一つの言語を足す。70点同士の交差点で十分に希少になる。
ここで注意がある。3を「新しい資格でやろう」とすると、また燃料を溶かす。交差点は資格ではなく、いま手元にある案件の中で作る。
知識の翻訳から「文脈の翻訳」へ。これが今期、燃料をほぼ使わずに替えのきかなさを保つ唯一の線だ。
逃げの一手:転換の最低ラインと期限を先に書く#
打ち手が効かない場合の退路を、効いているうちに決めておく。
判断基準はこうだ。今後6ヶ月、あなたの仕事のうち「AIに代替できない文脈判断」が業務時間の3割を超えないなら、ポジション転換に動く。
3割という線は、知識翻訳が値崩れしても食える最低ラインだ。これを下回ったまま同じ席に座り続けると、単価の値崩れに巻き込まれる。
期限は今期末。具体的には3つだけ。
- 異動の最低ライン 文脈を握れる案件・顧客のあるチームへ。社内で半年以内に1回打診する。
- 転換先の言語を1つ決める 事業企画、PMO、情シス側のどれか。技術知識の量で勝負しない席を選ぶ。
- 撤退の合図 上の打診が2回連続で流れたら、社外も含めて席を探し始める。
昇進した瞬間に孤独になる構造は誰も教えてくれなかった課長の仕事に書いた。退路も同じ構造だ。知らないまま走ると詰む。
起業や独立の話はしない。それは経営者の算数で、あなたの算数ではない。雇われたまま席を移すだけで、燃料は残る。
今期末の期限を決める前に、自分の燃料がいま何割残っているかを先に測っておく。測り方は燃料の家計簿——中間管理職が月単位で燃料収支を把握する方法にある。
まとめ:賞味期限は、知識ではなく「翻訳の単価」に来ている#
一般技術知識の値段が下がったのであって、あなたの価値が下がったわけではない。値崩れしているのは知識の翻訳であり、握るべきは文脈の翻訳だ。
期限を今期末に切り、3割の線で逃げの一手を先に書く。それだけで、年度をまたいでも燃料は残る。
本記事は AI が下書きし、管理人が監修しています。
