悲しくもないのに、涙が出た。
スマホを持つ手が小さく震えていて、ベッドから起き上がろうとすると身体が意志を持って動きたくないと訴えてくる。仕事に行かなければという強迫観念と、行けないという確信が同時にある。そういう朝を、あなたも一度くらいは経験したことがあるのではないか。
1. あの朝のことを書く#
IT業界に入って8年目の秋だった。
大規模開発プロジェクトの炎上案件に「ヘルプ」という名目で突っ込まれた。初日から終電は当たり前で、終電を逃せば近くのカプセルホテルで一夜を過ごし、そのままオフィスへ。2週間、家に帰れなかったこともある。
私はそれでも「なんとかなる」と思っていた。これまでもそうしてきたから。無理難題を工夫で乗り越えることこそ自分の価値だと信じていたから。
4ヶ月後、運よく家に帰れた翌朝のことだ。
涙が止まらなかった。スマホを確認しようとすると手が震えている。身体を起こそうとすると、筋肉ではなく何か別のものが拒絶している。そして頭の中に、それまでの人生で一度も本気で考えたことのなかった言葉が浮かんだ。
「仕事、行きたくない」
2. 燃料切れは静かに来る#
心療内科の診断は不安神経症と睡眠障害。医師に言われた言葉がまだ耳に残っている。
「うつ病の一歩手前でした。今日来られたのはラッキーです」
後から振り返ると、前兆は何週間も前からあった。返答がワンテンポ遅れるようになっていた。エクセルの操作スピードが落ちた。終電のホームで、電車を見ながら「これに飛び込めばすべて終わる」という考えが、自然と頭に浮かんだことがある。
過労状態の人間は、正常な判断ができない。これは感覚論ではなく、事実だ。思考は感情に支配され、目の前の景色と自分の感情が世界のすべてになる。自分の状態を客観視できないから、異常に気づけない。
そして、「自分がこうなるはずがない」という根拠のない確信が、最後の一手を打つのを妨げ続ける。
3. 燃料の算数#
人間の意志力と体力は有限だ。数字で言えばこうなる。
H = Result / Energy
単位エネルギーあたりの成果 H を最大化するのが「適正努力」だ。私がやっていたのはその逆だった。Energyを無限だと仮定して、Resultだけを積み上げようとしていた。
燃料が底をついたとき、Hはゼロになる。それだけではない。翌週復職したとき、すでに最大Energyが削られた状態でスタートしなければならなかった。私の体感では、消耗した時間の2〜3倍かかった。10ヶ月の休職が必要だった。
「倒れた1日」のコストは、実は「1日分」ではない。
4. 逃げの一手#
この記事を夜中に読んでいるあなたへ。
今日、誰かに言われた「頑張れ」が石のように重かったなら。会社のトイレで5分、泣いたことがあるなら。昨日何を食べたか思い出せないなら。
あなたはすでに知っている。何かがおかしいと。
心療内科の予約は、検索から3分でできる。翌日の受診を断るのも自由だ。でも番号だけ、メモしておいてほしい。
休職は選択肢のひとつだ。傷病手当金がある。産業医がいる。会社はその仕組みを用意している。倒れることは想定内なのに、使う側だけが「使っていいのか」と迷う。
倒れる前に逃げることは、撤退ではない。次の戦場で戦うための、燃料の温存だ。
会社は続く。プロジェクトも続く。
でもあなたの身体は、一度きりだ。
本記事は AI が下書きし、管理人が監修しています。
