来期予算の会議の席で、役員がIT部門の資料をめくりながら言う。「AIを入れたんだから、来期は何人減らせるか出してくれ」。あなたの課には、障害対応で手が足りない担当と、問い合わせが目に見えて減った担当が同居している。どちらの顔も浮かぶのに、返す欄は人数の1つしかない。
flowchart TD
A[何人減らせるか] --> B[削減か維持か]
B --> C[課長が説明係]
A --> D[職種別に分ける]
D --> E[増・縮・広の1枚]
「何人減らせるか」と聞かれた時点で、答えは二択に閉じている#
役員の問いは、人数を1本の線で見ている。線が下がるか、横ばいか。そのどちらかを選ばせる形で聞いている。
ところが実際の人員は、職種ごとに別の方向へ動く。一次ソースは調査会社Gartnerの調査「2027年CIOおよびテクノロジー幹部アジェンダ」だ。2026年5〜7月に、世界のCIOとテクノロジー幹部2,002人を対象に実施された。回答者の40%が、2027年にIT部門の人員を増やすと見込んでいる。
私はこの結果を、ITmedia エンタープライズの報道で読んだ。同記事は、AIは主にIT部門の人員削減に役立つという「多くのリーダーの想定とは食い違う数字だ」と書いている。Gartnerはその背景を「二重の人材構成の変化」と説明する。AIで技術を生み出すコストと労力は下がるが、技術の仕事への需要は全体として増える。そのうえで個々の役割には、縮小と拡大が同時に起きる。とくにサイバーセキュリティとデータ分析で、人員の増加が見込まれているという。
(出典: 「AI活用でIT部門の人員が増える」は本当か? 人材構成の「二重の変化」をGartnerが解説(ITmedia エンタープライズ))
ずれの説明は、両方の線が見える課長にだけ回ってくる#
役員が見ているのは合計人数の1本線で、現場にあるのは職種ごとの何本もの線だ。ここではこの食い違いを「一本線の人員計画」と呼ぶ。線が1本のまま予算が組まれると、差を埋める説明は、両方の線が見える位置に回ってくる。組織の結節点にいる課長だ。
だから、うまく答えられないのはあなたの説明力の問題ではない。問いが二択で届いている以上、どちらを選んでも半分は嘘になる。「減らせます」と言えば手の足りない職種が詰まり、「減らせません」と言えばAI投資の効果を問われる。号令そのものに反証データで言い返す手もあるが、数字で勝っても問いが二択のままなら、次の会議で同じ問いが来る。
この前提は、実態より先に数字になって降りてくる。提案する側にいる私の仕事でも、IT運用の提案は契約更新ごとに10%程度のコストダウンを示せばおおむね通っていた。それがいまは、1年で30%、3年で50%、5年で70%程度を求められるのが普通になった。背景の1つは、AIが知的労働の大部分を代替するという少し過剰な言われようで、もう1つはAIの進化速度への期待だ。AIを前に出した提案ほど、その言葉が要求水準になって返ってくる。
合計人数の欄は作らず、職種を3列に分けた1枚で返す#
返す物は、合計人数ではなく自課の職種の地図にする。全社の要員計画を描く必要はない。あなたの課が持つ職種だけを、増える・縮む・役割が広がるの3列に振り分ける。
手順は3つで、30分あれば足りる。
- 課の業務を職種ごとに書き出す(担当者名は書かない)
- 各職種を3列のどれかに置き、置いた理由を1行ずつ添える
- 縮む列で浮く時間を、増える列のどこへ回すかを最後の行に書く
書き出しが重ければ、業務一覧をAIに貼って下書きさせてよい。依頼文と1枚の形はこうだ。
【依頼文】
以下は私の課の業務一覧です。職種ごとにまとめ、
「増える」「縮む」「役割が広がる」の3列に分けてください。
各行に、そう判断した理由を1行で書いてください。
人数の合計は出さないでください。
【1枚の形】
来期の体制案(○○課)
増える職種:(例)セキュリティ監視/データ分析
理由:
縮む職種:(例)定型の問い合わせ一次対応/手順書どおりの運用作業
理由:
役割が広がる職種:(例)テスト担当が設計レビューまで持つ
理由:
縮む列で浮く時間の回し先:例の行は私が置いたもので、Gartnerが挙げているのはセキュリティとデータ分析の増加、職務の境界が曖昧になる話までだ。境界の話は、同社のバイス プレジデント アナリスト、アリシア・マレリー氏の発言としてITmediaが伝えている。同氏は「例えばデザイナーがテスト業務を担い、テスターが設計に携わるようになる」と述べ、各職務の責任範囲は広がる一方で、組織が必要とする職種の種類は減ると続ける。人数では見えない変化が、3列目に入る。
役員に事業の将来性を聞かれて詰まったときにも、客先に出している部下の仕事を作業と判断に割って見せる手がある。今回の1枚は、その割り方を職種の単位に広げたものだ。30分かかっても、二択の答えを会議のたびに弁明し続ける燃料よりは安い。
人数の代わりに、止めるAI案件の基準を3行添える#
役員が人数を聞く理由は、たいていコストだ。人を減らす以外のコストの出口を1つ渡せば、問いの圧は下がる。その出口が、価値の低いAI案件を止める基準になる。
Gartnerは、ビジネス成果で優れた実績を上げ、かつCEOが認識するAIの価値も高いと報告するCIOを「先駆者」と定義している。先駆者は、パイロットと本番運用の2つの段階で停止ルールを設ける傾向にあるという。前者はパイロットを本番環境に移行すべきでないケースを判断するガイドライン、後者は本番で稼働している価値の低いAI案件を中止するガイドラインだ。こうした基準を持つ組織のCIOほど、先駆者に該当する割合が高かった。
(出典: 「AI活用でIT部門の人員が増える」は本当か? 人材構成の「二重の変化」をGartnerが解説(ITmedia エンタープライズ))
もっとも、あなたが決められるのは全社の基準ではない。自課が持つAI案件について、止める候補を出すところまでだ。1枚の下に、次の3行を足す。
【止める候補の基準(自課のAI案件)】
・試行:始める前に書いた「何の作業が減るか」が、
試行の終わりに測れていなければ本番に上げない
・本番:四半期ごとに減った時間を見て、
( )回続けて目標の( )割を下回ったら止める候補に挙げる
・止めた案件の保守費と担当時間は、増える列へ回す案として書く空欄の値は自課で決める。初回は2回・5割あたりから置けばいい。根拠のある数字ではなく、空欄のまま出すよりましという目安だ。止めるかどうかの決定は役員側に残し、あなたは候補と理由を並べる側に立つ。
逃げの一手:人数を迫られたら、縮む列の分だけ答える#
1枚を出しても、「それで結局何人だ」と押し返されることはある。そのときは縮む列の職種に限って、何人分の時間が浮くかを答える。増える列と広がる列の分は相殺せず、別の行に残したままにする。合計の1本線に戻すのは、決める人の仕事だ。
1枚は口頭で渡さず、メールに添付して送っておく。来期に増える職種が詰まったとき、先に書いて出した記録が手元に残る。減らした仕事が数か月で戻ってくる心配があるなら、その穴を誰の予算で埋めるのかを返信に残しておくやり方を重ねてもいい。
今週その1枚すら重いなら、増える列の1行だけでいい。「セキュリティ監視は来期も手が足りない」と1行返すだけで、二択の問いに3つ目の答えがあることは伝わる。
まとめ:二択で聞かれても、3列で返していい#
「AIで何人減らせるか」は、合計人数の1本線で組まれた問いだ。職種の線が何本もある以上、あなたが返すのは人数ではなく、増える・縮む・広がるの3列と止める案件の基準になる。
本記事は AI が下書きし、管理人が監修しています。
査定に載らない組織仕事を振られたその日に、そのまま出せる定型文が3通ある。
→ 期待値コントロール定型文集(抜粋版)続きはタイムラインに置いていく。
