仕事に前向きなのに、なぜか扱いに困る部下がいる。サボっているわけでも反抗的でもないのに、関わるたびにこちらの燃料計の針が落ちる。
その部下に「君はどう思う?答えは君の中にある」と問いかけてみた。返ってきたのは、ポカンとした顔だった。
私が話を聞いてきた課長たちは口を揃えて言う。「やる気のない部下より、やる気はあるのに噛み合わない部下のほうが疲れる」と。前者は放っておけるが、後者は放っておけない。だから関わる。関わるたびに削られる。
flowchart TD
A[扱いに困る部下] --> B[本人を変えようとする]
B --> C[関与コスト増大]
A --> D[お題を設計する]
D --> E[本人が試行錯誤]
E --> F[関与コスト低下]
付け焼き刃コーチングが逆効果になる理由#
「答えは本人の中にある」という前提でつくられた問いは、相手に答えがあるときにしか機能しない。
楽天大学の仲山進也は、職場で「こじらせた人」とどう仕事をするかを語ったインタビューで、この点を突いている。本人が言語化できていないものを「どう思う?」と問うても、相手はポカンとするだけだ。問いが空振りする。
ここで起きているのは、課長の側の二重消耗だ。まず、問いを投げる準備に燃料を使う。次に、空振りした問いを別の角度から投げ直すために、もっと燃料を使う。相手を変えようとする関わり方は、構造的に課長の燃料を最速で食う。
外から観察してきた限り、ここで多くの課長が「自分のコーチングが下手なせいだ」と解釈する。違う。前提が間違っているだけだ。本人の中に答えがないものを、問いで引き出すことはできない。
「相手を変える」から「お題を設計する」へ#
仲山の議論で核心になるのは、相手を変えようとするのをやめる、という一点だ。
人を変えようとする関わりは、相手の人格に手を突っ込む行為に近い。だから抵抗されるし、こちらの感情も激しく消耗する。代わりに置くのが「お題」だ。本人が試行錯誤できる課題を渡し、本人が動くのを待つ。
タスクを渡すのではなく、考える枠を渡す。違いは、お題設計が「扱いに困る部下」という、関与コストが最も高い相手を想定している点だ。
ポイントは、課長が答えを持っている必要がないことだ。お題を渡したら、あとは本人の試行錯誤を待つ。課長は採点者ではなく、お題を出す人になる。この立ち位置の変化が、関与コストを下げる。
燃料を残したまま「お題」を渡す手順#
お題設計は、3つの手順に分解できる。全部を一度にやる必要はない。
- 困りごとを「お題」に翻訳する。 「あの部下が扱いにくい」を、「この部下が自分で動けるようになるには、どんな課題があるか」に置き換える
- 本人が試せる範囲でお題を渡す。 「来週の定例、進め方をあなたなりに設計してみて。失敗していい」と、試行錯誤の余地ごと渡す
- 採点せず、観察記録だけ残す。 うまくいったか・困ったかを事実としてメモする。感情で評価しない
特に3つ目が燃料を守る。感情を経由して部下を評価すると、1on1で感情燃料が底をつくのと同じ消耗が起きる。観察者として座り、事実だけを記録する。共感も叱責も、その場で生成しない。観察の解像度を上げたい場合は、部下の変化を感情を使わず読む観察設計が参考になる。
お題に対して部下が動かなくても、それは課長の失敗ではない。お題の粒度が合っていなかったか、本人がまだ動ける段階にないか、どちらかの観察データが取れただけだ。「変えられなかった」という自責が発生しない構造になっている。
逃げの一手#
お題を渡しても本人がまったく動かない、関わるたびに消耗が止まらない。そういう相手は存在する。
そのときは「この部下を自律させること」自体を、いったんお題から外す。課長の役割は全員を自律させることではない。部下の沈黙が爆発する前の構造でも書いたが、特定の一人に燃料を吸われ続けるのは、配置・担当の問題であることが多い。
放置する勇気を持つか、人事を巻き込んで配置を見直すか。どちらも退路だ。あなたが倒れるまでお題を出し続ける義務はない。関与の頻度を落とす判断は、職務放棄ではなく燃料配分の設計だ。
まとめ:課長は採点者ではなく、お題を出す人でいい#
扱いに困る部下を変えようとする限り、燃料は静かに、しかし確実に減り続ける。
変えるのではなく、お題を渡して試行錯誤を待つ。採点せず観察する。それでも動かないなら、その一人に賭けるのをやめる退路がある。課長の燃料は、全員を救うためにあるのではない。
本記事は AI が下書きし、管理人が監修しています。
