金曜18時、Slackの通知欄に見慣れた名前が並ぶ。チームで一番忙しそうな部下から、また残業申請が来ている。隣の部下は、今週も定時で退勤していた。
同じ量の仕事を渡しているつもりはないのに、「業務量が多い」と感じるのはいつも同じ部下からだ。それを上司に伝えても、「みんな忙しいのは同じだ」で片づく。これは感覚の対立ではなく、片方が数え、片方が数えていないだけの話だ。
flowchart TD
A[偏りは感覚] --> B[伝えても数字なし]
B --> C[上司は動けない]
C --> D[同じ人に積み増し]
D --> A
気づいているのに、誰も数えていない#
あなたは気づいている。Aさんの担当案件は先月から3件増え、Bさんは変わっていない。Aさんの資料は締切前に2回差し戻され、Bさんは1回で通った。
だが、この違いを誰かと比較した記録は残っていない。気づいているのはあなた一人で、それも記憶の中にしかない。1週間経てば、先月何件だったかはもう曖昧になる。
「多い気がする」は主観の記憶に依存する。記憶は比較に向いていない。だから偏りは、確かに存在しているのに、誰の目にも見える形では存在していない。
偏りが議題にならない理由は「感情の言葉」にある#
不満として伝えると、相手は「気のせいでは」で終わらせられる。判断材料が主観の言葉しかないからだ。数字のない訴えは、反論しやすい訴えでもある。
「言っても変わらない」という諦めの構造は別の話で、そちらは別記事に書いた。ここで扱うのは、その手前の一点に絞る。そもそも誰も数えていない、という事実だけだ。
見えない偏りのしわ寄せは、結局あなたの時間外に落ちる。リクルートマネジメントソリューションズ「管理職のあり方に関する実態調査」(2026年2月24日公開)は、管理職が一般社員と比べて「勤務時間外の連絡」「勤務時間外の業務」「休日の業務対応」のいずれも選択率が高いと報告している(出典: 「管理職のあり方に関する実態調査」の分析結果を発表)。誰かの担当が積み上がっているのに誰も動かさなければ、最後にそれを引き取るのは大抵あなただ。
私自身、後輩の育成が追いつかないまま案件を増やしたことがある。マネジメント8割・プレイヤー8割、合計で本来の16割分の仕事を抱えていた。振り返れば、自分は調整役ではなく穴埋め役になっていた。
件数×締切×手戻り回数の3列で出す#
感情ではなく配分の議題にするには、比較できる形で出す。使うのは3つの列だけだ。件数、締切、手戻り回数。
件数だけでは負荷の密度が分からない。締切が1週間に集中していれば、件数が同じでも負荷は跳ね上がる。手戻り回数を足すのは、やり直しという見えない再作業の時間を拾うためだ。個人の業務そのものを解体する話は別記事に書いた。今回はチーム全体の配分を見るための表になる。
1〜2週間、メンバー全員の担当タスクをこの形で書き出す。数える作業自体は、あなた一人の裁量でできる。
| 担当者 | タスク/案件 | 件数(今週) | 締切(今週中の件数) | 手戻り回数(直近1ヶ月) |
|---|---|---|---|---|
| Aさん | | | | |
| Bさん | | | | |判定の線引きも先に決めておく。件数がチーム平均の1.5倍、1週間以内の締切が3件以上重なる、手戻りが2回以上——このうち2つに該当したら「偏り」と扱う、という基準を置くとよい。
議題に上げるときの言い方#
表ができたら、感想ではなく事実として出す。「大変そうです」ではなく、数字を見せて判断だけを求める。
このリストを見てください。Aさんは来週、締切が3件重なっています。
Bさんは今週2件です。どちらかを動かすか、優先順位を決めてもらえますか。この言い方が効くのは、相手に「動かす/動かさない」という判断だけを求めているからだ。感情の当否は判断させていない。上司が反論できるのは数字の見方に対してだけで、存在そのものは否定できない。
出す相手は上司でなくてもいい。チーム内で完結する調整なら、本人同士で表を見ながら振り直してもいい。あなたが握っているのは表を作る権限だけで、配分を決める権限まで抱え込む必要はない。
通らなかったときの逃げの一手#
それでも「気のせいだ」と返されることはある。データを見せても配分が動かない場面は、現実にはむしろ多い。
そのときは、表を消さずに残す。安全配慮義務の観点からも、業務量の客観的な記録は自分を守る材料になる。倒れてからでは作れない。
そしてもう一つ。積み増しの依頼が来たら、この表を理由に断る。「この件数と締切を見てください、来週はもう空きがありません」と言うだけでいい。断るコストをゼロにする事前設計は別記事にまとめた。
まとめ:偏りは感情ではなく、数えた者だけが議題に変えられる#
不満のまま置いておけば、偏りは存在しないことにされる。件数と締切と手戻り回数で出した瞬間、それは議題になる。
本記事は AI が下書きし、管理人が監修しています。
査定に載らない組織仕事を振られたその日に、そのまま出せる定型文が3通ある。
→ 期待値コントロール定型文集(抜粋版)続きはタイムラインに置いていく。
