人事から「Aさんの異動が決まったので、来週までに本人へ伝えておいてほしい」という一斉メールが届く。決定の背景も、選ばれた理由も、そこには書かれていない。伝える相手は3年一緒に仕事をしてきた部下で、理由を聞かれれば答えなければならない立場に自分だけが置かれる。
flowchart TD
A[人事の決定] --> B[管理職に通知のみ]
B --> C[根拠見えぬまま説明]
C --> D[部下の離職検討]
「言っておいて」で完結する説明が壊すもの#
HRBrainが、過去に人事異動・配置転換を経験した20〜50代の会社員を対象に実施した「人事異動・配置転換に関する意識調査」では、56.9%が異動をきっかけに離職・転職を検討した、あるいは実際に行ったと回答している(出典: 「異動の理由を説明して」 56.9%が離職・転職を検討 納得感を高めるカギは?)。半数を超える数字は、異動そのものより、異動の伝え方に問題があることを示している。
同調査では面談時間別の不満も出ている。「5分未満で、口頭説明なし」だった層では、「コミュニケーション不足(決定背景の説明不足+対話履歴の軽視)」への不満が40.5%に達した。一方「5〜15分未満の簡単な補足」があった層は25.0%、「15分以上の丁寧な対話」があった層も27.4%と、いずれも2割台にとどまっている。
時間を延ばしても消えない不満の正体#
ここでまず疑いたくなるのは「説明の時間が短いから納得されない」という見立てだ。だが15分以上かけて丁寧に話した層でも、不満は27.4%残っている。5〜15分の層とほとんど差がない。
差がつくのは時間ではなく別の数字だ。同調査では、過去の面談記録や実績が次の異動に「引き継がれていない」と回答した人が53.7%と、「引き継がれている」の46.3%を上回った。伝える側の管理職自身が、決定の根拠になった過去の記録を渡されないまま、部下の前に立たされているケースが半数を超えている。
説明が下手なのではない。渡されていない情報を、渡されていないと自覚しないまま話そうとするから、言葉が空転する。
知っている事実と知らないことを先に線引きする#
説明の前にやることは1つだけだ。自分が知っている事実と、知らない事実を紙に2列で書き出す。3分もかからない。
マネジャー時代、部下から「今期の自分の評価はどうなりそうか」と聞かれるたびに、自分がどう判断したかは根拠つきで伝え、その先で最終的に上長がどう判断するかは自分にもわからないと、事実だけを返してきた。異動の理由を聞かれたときも、同じ切り分けがそのまま使える。
線を引く基準はこうなる。自分が推薦や評価のやり取りに直接関わった事実は、部下に話してよい。人事だけが握る情報――他の候補者との比較、最終的な配置の意思決定過程――は、自分も知らされていないなら知らないと言う。ここを曖昧にしたまま「たぶんこうだと思う」で埋めると、後から根拠のない説明として跳ね返ってくる。
評価面談で仕分けに困ったときの3点フォーマットと同じ発想で、異動の説明も「事実」「推測」「不明」の3つに分けてから話し始めるだけで、その場で言葉に詰まる回数は減る。
わからない部分は相談窓口の名前で渡す#
知らないことを聞かれたら、知らないと答えた上で、それで終わらせない。相談できる窓口を名前で渡す。
異動の背景について、私が把握しているのはここまでです。
・私から直接お伝えできる事実は〇〇です
・最終的な配置や他の候補との比較については人事側の判断であり、
その詳細は私にも共有されていません
・詳しい経緯を確認したい場合は、人事の〇〇さんへ直接問い合わせてください自分の想像で埋めない。これだけで、後日「あの時の説明と違う」と言われるリスクは減る。
それでも納得されないときの逃げの一手#
この線引きをしても、部下がその場で納得するとは限らない。それでいい。1回の面談で全員を納得させる義務は、伝達役に回された管理職にはない。
断るコストをゼロに設計する話と同じで、同じ質問を繰り返されても、一次回答は「わからないことはわからない」で切り上げてよい。話が平行線になったら、その場で結論を出さず、人事への確認を挟むと言って引き取る。査定面談で先に交渉を仕掛ける台本も、この「その場で決めない」判断の延長線上にある。
まとめ:説明が下手なのではなく、渡されていない#
異動の理由を聞かれて言葉に詰まるのは、説明力の不足ではない。渡されていない情報を、渡されていないと言えるかどうかだけの話だ。
本記事は AI が下書きし、管理人が監修しています。
査定に載らない組織仕事を振られたその日に、そのまま出せる定型文が3通ある。
→ 期待値コントロール定型文集(抜粋版)続きはタイムラインに置いていく。
