22時、子どもを寝かしつけた後にXを開くと、「管理職はいらない」という記事が流れてきた。指が止まる。
複数のチームを見るマネジャーが真っ先に不要になる、という趣旨だ。裁量労働で残業代の出ない自分の椅子が、名指しされた気がした。
私自身、複数チームを見る立場だった時期に似た記事を読んで、同じ動悸を覚えたことがある。だが後で気づいたのは、不安の正体が存在価値ではなく時間の中身だったことだ。
flowchart TD
A[1週間の業務] --> B[調整作業]
A --> C[判断業務]
B --> D[AIへ渡す]
C --> E[時間を寄せる]
「管理職不要論」が刺さるのは、存在ではなく時間の中身#
きっかけはTechTargetジャパンが2026年8月20日に報じた記事だった。ソフトウェア開発支援企業Eficodeの最高技術責任者クレメッティ氏が、「複数のチームを管理するマネジャーは不要になり、マネジメントの役割は実験の方向性やビジョンを設定することに変化する」と述べたと伝えている。同記事は、削減の対象は末端のエンジニアではなく従来型の階層構造そのものだと指摘している。
この発言が課長に刺さる理由ははっきりしている。自分の仕事の大半が、まさに「複数のチームを管理する」作業に費やされているからだ。進捗を聞く、資料をまとめる、上と下の言葉を翻訳する。この作業がAIに置き換わるなら、自分は何をする人間になるのか——そう読める。
だが、この読み方には見落としがある。クレメッティ氏は「マネジャーが要らない」とは言っていない。「複数チームを管理する形」が要らなくなり、役割が「方向性やビジョンを設定すること」に変わると言っている。消えるのは人ではなく、時間の使い方の型だ。
調整作業と判断業務、比率で見れば正体が分かる#
命名し直すとこうなる。あなたの1週間の業務は大きく2種類に分かれる。
調整作業は、情報を右から左に運ぶだけの仕事だ。進捗確認、日程調整、資料の体裁直し、報告のための報告がここに入る。判断業務は、あなたの決定がなければ次に進まない仕事だ。優先順位を決める、方針を選ぶ、責任を取る形で「これでいく」と言う作業を指す。
クレメッティ氏の言う「実験の方向性やビジョンを設定すること」は、後者そのものだ。前者は情報処理であり、AIが最も得意とする領域と重なる。「管理職不要論」を読んだときの不安は、正確には「私という存在が要らない」ではなく「私の時間の大半が、代替されやすい調整作業でできている」という事実への反応だと言い換えられる。
AIが減らせない課長の負荷は別にある。感情労働や政治的な調整はそちらに残る。だが調整作業のすべてがそこに含まれるわけではない。「誰かに聞かれたから答える」「日程を合わせるために往復する」といった処理は、判断を含まない純粋な調整であり、ここが今回の一線の対象になる。
隣で働くマネジャーたちを見ていると、この2種類を意識して仕分けている人はほとんどいない。カレンダーは会議の名前で埋まるだけで、それが調整なのか判断なのかを分けて記録していない。何にどれだけ使っているかを本人が知らないまま「不要論」を読むと、根拠のない全否定として響く。
1週間のログを2つに仕分け、AIへ渡す比率を上げる#
やることは4つだ。判断は伴わないので、今週から始められる。
1. 直近1週間の予定とやり取りを、調整か判断かで仕分ける。 判定基準はひとつ——「その場にあなたがいなくても、誰かの決定を待たずに進んだか」。進んだなら調整、進まなかったなら判断だ。
2. 調整側の比率を数える。 時間の長さでも件数でもいい。半分を超えていたら、そこがまず削る場所になる。業務を2軸で仕分ける具体的な手順は別記事に詳しい。
3. 調整作業のうち定型化できるものを、AIに渡す文面に変える。 進捗確認のメッセージや日程調整の依頼文は、判断を含まないのでAIに渡しても責任の所在は動かない。次のプロンプトはそのまま使える。
あなたは私の進捗確認業務を代行してください。
以下の情報から、関係者への状況確認メッセージを3パターン作ってください。
1. 期限まで余裕がある場合の軽い確認文
2. 期限が近い場合の確認文(返信必須の一言を添える)
3. 遅延が疑われる場合の確認文(次の判断を促す一言を添える)
案件名: [ ]
関係者: [ ]
期限: [ ]
現状分かっている情報: [ ]4. 判断業務に確保した時間を、カレンダーに先にブロックする。 空いた時間から埋まるのを待つと、また調整作業に食われる。1と2で洗い出した「判断」の時間帯を、翌週の同じ枠に先に押さえておく。
比率が動かないなら、一線がまだ無いと認める#
2週間仕分けても調整側の比率が下がらないことがある。原因はやり方ではなく、周囲があなたを調整役としてしか使っていない可能性が高い。
そのときの逃げの一手は、判断業務を先に上司へ見せることだ。「今期はこの方針で進める」という一枚を、聞かれる前に出す。判断業務が可視化されていなければ、周囲はあなたを調整役としてしか認識できない。
それでも変わらないなら、管理職削減の圧力そのものへの対処に切り替える判断もある。無理に一線を守ろうとして燃料を使い切る前に、調整の相談窓口としての時間に上限を作る方法もある。
まとめ:不要論が問うのは存在ではなく時間の中身だ#
「管理職はいらない」という言葉が指しているのは、あなたという人間ではない。調整に使われた時間の量だ。
その量を自分で計算していない限り、不安は消えない。
本記事は AI が下書きし、管理人が監修しています。
査定に載らない組織仕事を振られたその日に、そのまま出せる定型文が3通ある。
→ 期待値コントロール定型文集(抜粋版)続きはタイムラインに置いていく。
