案件を3つ掛け持ちしている水曜の夜。案件Aのチームリーダーが出した見積もりの前提が薄い。あなたは自分で数字を組み直し、赤入れをして返す。案件Bでも案件Cでも同じことをして、気づけば22時になっている。
flowchart TD
A[課長が降りる] --> B[短期は品質OK]
B --> C[リーダー育たず]
C --> D[来月も同じ判断]
D --> A
降りるほど、チームリーダーは育たなくなる#
私が話を聞いてきた課長たちは口を揃えて言う。「降りたほうが早いし、確実だ」と。
この判断は間違っていない。今週のレビューだけを見れば、あなたが降りた案件のほうが確実に品質は高い。だから止める理由が、あなた自身の中に見つからない。
問題は来週ではなく来月に出る。チームリーダーは今週も判断をあなたに預けたまま、判断の場数をひとつ積み損ねる。同じ状況が翌月も起き、あなたはまた降りる。
これが、降りるほど育たなくなる自己複製の中身だ。
なぜ「今週は正しい」判断が、来月も同じ地獄を作るのか#
この繰り返しが起きるのは、あなたが見ている単位とチームリーダーが失っている単位がずれているからだ。
あなたが最適化しているのは「今週の成果物の精度」だ。しかしチームリーダーに本来溜まるはずなのは判断した回数のほうだ。降りるたびに、あなたはその回数をひとつ持ち去っている。
これは、短期的には正しい判断の積み重ねが非対称なコストを生む構造と同じ形をしている。1回ごとの判断は正しくても、繰り返しの単位で見ると損をするのはいつも同じ側だ。今回損をするのは、チームリーダーの経験とあなたの時間の両方だ。こうした非対称性そのものが、実務とマネジメント二役を強いるプレマネという構造の中核にある。
さらに複数案件を掛け持つ課長は、案件ごとに頭を切り替えるコストをすでに払っている。そこへ各チームの実務判断まで引き取れば、切り替えの回数はチーム数の分だけ増える。品質を守るための行動が、品質を守るための燃料を削っている。
マネージャーに答えさせる問いの設計#
降りずに品質を見るには、作業を巻き取るのをやめて、判断をチームリーダーに投げ返す問いに変える。型は3つある。
どこで判断に迷ったかを聞く#
「この見積もり、大丈夫?」ではなく「一番判断に迷った数字はどれ?」と聞く。
作業の完成度ではなく、判断が発生した箇所を特定させる問いだ。迷った箇所を本人が言えるなら、リーダーは自分の判断をすでに自覚している。言えないなら、そこがまだ育っていない箇所だとわかる。
判断の根拠を聞く#
迷った箇所が出たら、「その数字はどの前提で置いた?」と聞く。
答えが曖昧なら、それは能力ではなく前提の共有不足だ。前提さえ揃えば、次回は本人が同じ数字を自分で置ける。あなたが数字を直す代わりに、前提を1つ渡すだけでいい。
次に同じ穴をどう防ぐか聞く#
最後に「次はどこを先に確認すればこの見積もりミスは防げた?」と聞く。
防止策を本人の言葉で言わせる。あなたが手順書を作って渡すより、本人が言語化した防止策のほうが、次の案件で実際に使われる。
1on1で部下の口が開かないのも、同じ設計の問題だった。範囲を絞り、意図を先に置き、答えさせる。案件レビューでも1on1でも、問いの設計は同じ型で効く。
逃げの一手#
問いに切り替えても、品質が保てない案件は残る。全チームに同じ密度で問いを投げる時間そのものが、あなたにはない。
そのときは、監視する案件を絞る。3案件すべてに同水準の関与を続けるのをやめて、リスクが最も高い1案件だけに時間を残し、残りは事実だけを報告させる形に下げる。
これは手抜きではない。あなたが全案件に降り続けた末に倒れれば、3案件とも同時に止まる。倒れる前の合図はすでに体に出ていることが多い。降りる範囲を先に絞るのは、その合図を無視しないための一手だ。
上司には「3案件を同じ密度で見るのは、この工数では不可能です」と事実で伝える。それでも同水準の関与を求められるなら、それはあなた個人の設計ミスではなく、そのチーム体制自体の人員不足だ。
締め#
降りる判断は、その週だけ見れば正しい。だからこそ止まらず、チームリーダーが判断を積む機会を毎月ひとつずつ削っていく。
参考#
本記事は次の構造分析を土台にしている。
- 「プレマネの燃料計算:マネジメント専任が存在しない構造的理由と引き受け拒否の退路」 — 実務とマネジメントの二役化がなぜ標準になったかの構造分析(本文中でリンク済み)
- 「1on1で部下が黙るたびに消耗する管理職が、問いの設計で沈黙を解体する手順」 — 「答えさせる問い」の設計手順の初出(本文中でリンク済み)
本記事は AI が下書きし、管理人が監修しています。
